出口が開いてないと腰を据えられない
はてなブログ、使いやすいので気楽にいろいろ書きたいのだけど、なぜか本腰で書く気になれない。
理想的なブログツールを求めて自分でブログツールを開発してみたり、その途中でGhostを見かけて、やりたいことがほぼ同じだとわかったのでもう自分で作らなくていいやと応援する側に回ってみたり、と右往左往している。
そんな風に逡巡してる理由を自分なりに考えてみたんだけど、一言でいうと「ここにはエクスポート機能がないから」に集約される気がしてきた。実際、Ghostのフォーラムでも同じ質問をしている。
TwitterやFacebookのようなフローで垂れ流しのサービスなら、あまりそういうのは気にならない。そもそも情報を整理する目的で使ってないし、どちらかというとチャットの延長上でS/N比が低いから、再利用性の高い情報をそこに貯めていこうという動機が、ハナからない。
でも、ブログは違う。ブログは、ふわふわと浮いているさまざまなアイデアを一本のコンテキストで串刺しにして、ひとつのアーティクルとして編集・整理することができる。その編集という工程に付加価値があるからこそ、いまでもブログは生き残っているし、今後も残り続けるのだと思う。
おそらくブログのコンテンツの寿命は平均的なウェブサービスの寿命よりも長い。だから、昔はあまり気にならなかった、データのポータビリティみたいなものが、より大きな比重をもって感じられるようになってきたのだとおもう。
どんなに大きな会社の有名なサービスでも、方針転換などによってある日突然なくなったりするということを、ぼくらは何度も何度も目にしてきた。そんな状況で、ある一つの会社の一つのサービスに、魂を込めて書いた自分の人生そのものであるような文書を、唯一無二の保存場所として預けることができるだろうか。たとえば、研究者が自分の論文をあるウェブサイトに掲載するとして、自分のマシン上に元本がない状態でも安心できるだろうか。そのような制約下で、本当に素晴らしいコンテンツを書き上げようというエネルギーは湧いてくるだろうか。
この構図には、変なたとえだが、社員をいろいろなルールで縛ってがんじがらめにして小さくまとまらせておきながら「うちの社員には突き抜けた行動力のある優秀なのがいなくて。。。」と愚痴をたれる上司に似た矛盾を感じなくもない。
現在のネットのトレンドとして、データの寿命を意図的に短く10秒まで縮めたsnapchatのような揮発性のコミュニケーションと、長く残り続けることを志向するブログのような文書志向のツールとの二極化がますます進行していると思う。つまり、「長く残り続ける」というのは、ブログのたくさんある特性の一つではなく、進化していくネットにおいて他のツールと差別化していく上で最も重要な特性になってきてるのではないだろうか。
サービス提供者の立場からすれば、エクスポート機能を排除してユーザとデータを囲い込みたいというのは順当な心理ではあると思う。しかし、その発想はあまりにも「器が小さい」ように思う。実際、フローにすぎないTwitterですらアーカイブのエクスポート機能を提供しているし、Googleに至ってはTakeoutという、エクスポートセンターのような場所さえある。資本主義の権化といわれるアメリカの、それも株式を公開している企業がこのような懐の深さを見せていながら、日本ではカッティング・エッジな存在として知られるはてながセコい囲い込みに終始しているように見えてしまうのは、なんとも残念でならない。
むしろ、ブログというツールが果たす役割を考えるとき、「コンテンツが長く残るという安心感」につながる一つの切り口として、エクスポートというのはむしろこれまで以上に強化していくべき側面ではないだろうか。
とってつけたようなエクスポートではなく、たとえば、リンクしたDropboxアカウントにMarkdownファイルを吐き出してくれるとか、逆にDropboxに置いたMarkdownファイルをインポートしてブログ記事化してくれるとか、記事を公開するたびに記事単位でダウンロードリンクが生成されるとか、ブログを真剣に書きたい人の深層心理に刺さるアドバンテージとして積極的に開拓していく余地は大きいように思う。
というわけで、はてながエクスポートを実装するのが先か、Ghostが使えるレベルになるのが先か。2014年にはブログを再開できることを願いたい。