開発者のマシンを英語環境にしない理由はもはや一つもない
2011年も終りが近づいた昨今、日本の市場が今後どんどんシュリンクしていくことは、もはや子供でも知ってる周知の事実なわけです。
そういう時代にあって、開発者が日本語環境のマシンを使い続けることの意味は、よくよく考えたほうがいいと思うわけです。
個人的には、「世界中で使われるサービスを作りたい」といってる開発者のマシンをみて、キーボードがJISだったりOSが日本語だったりすると、もうその時点でかなりガクッときます。
とくに完全なる国際化が実現されているMacなら、キーボードさえBTOでUS仕様にしてしまえば、アメリカで売ってるMacと100%同じものになります。逆に言うと、アメリカで買ったMacでも、そのまま何の問題もなく日本語が使えるわけです。(実を言うと、現在アメリカのApple Storeでは、日本語JIS配列のキーボードを選ぶことさえできるようになっています)
買ったばかりのMacをはじめて起動するときに、使用言語を選んだのを、覚えていますか?世界中どこの国でも、その国の母国語を話すわけではない外国人が住んでいる、ということを配慮して、何語を話す人々にとっても平等なセットアップの手順になっているのでしょう。英語環境と日本語環境の切り替えも、再起動さえする必要がないぐらい簡単です。(設定を変えたらログオフ・ログインするだけでOK)
そして、
- 英語キーボード
- 英語OS
- 英語ブラウザ(実際には設定でen-usをja-jpの上に持っていくだけ)
という環境にしてしまえば、世界中の主要なソフトウェアを開発している人たちのほぼ全員と、何も違わない環境が手に入るのです。英語圏のユーザたちと同じ目線で、世界を見ることができるようになるのです。そのメリットははかりしれません。
では、そうすることのデメリットは何でしょうか。実は、誤解されていることがいくつかあります。
- 英語環境だと、日本語が表示できなくなるんじゃないの?
- 英語環境だと、日本語が入力できなくなるんじゃないの?
これらは、いずれも誤りです。世界中で販売されるすべてのMacには、世界中のあらゆる文字を表示できるだけのフォントが入っており、また世界中のあらゆる言語を入力するためのツールが入っています。これはiPhoneやiPadも同じです。
ぼくはもう15年以上、日本にいたときからMacを英語環境で使っていますが(注:OSX以前から漢字Talkではなく輸入版+language kitを使ってた)、何一つ不自由していません。強いて言えば、(今はもう使っていない)ATOKをインストールするときに、なぜか「日本語環境でないとインストールできません」と怒られるというクソ仕様があり、このためだけに、いったん日本語環境に切り替えてATOKをインストールして、すぐ英語環境に戻す、という手順を踏まなければいけない、ということがありました。それすらも面倒くさいので、現在はATOKを捨ててGoogle Japanese Inputを使うようになりました。それ以降、日本語環境に切り替えたことは、ほんとにただの一度もありません。
だから、実際的なデメリットは以下になるでしょう。
- 英語OSではメニューや設定が英語になるので使いにくい
- 英語ブラウザでは表示が英語になるので使いにくい
- キーの配置が違う、returnキーが小さくなるので押しにくい、controlキーが押しにくい
- 「英数キー」「かなキー」がなくなるので日本語入力の切り替えがしにくい
このなかで、前半2つは、デメリットではなくメリットと見るべきです。
- メニューや設定に出てくる英語は、基本的に非常に平易で、少量で、日々繰り返し見るものなので、すぐ慣れます
- あなたは開発者なのですから、メニューや設定にどういう英語表現を使うのが適切か、ということを学べるいい機会だと考えるべきです
- 英語圏のひとがサイトをみたときに、どういう風に見えているのかを、日常的に意識することができるようになります。ところどころ日本語が混じったりしている中途半端に英語化されたサイトが、いかに不格好で気持ち悪いかを体験することができます
逆に、「日本語環境でどう見えるか?」を確認するにはどうしたらいいでしょうか。ぼくは、そのためだけに、普段は使わないFirefoxで、日本語での表示を優先するようにしています。Preference -> Content -> Languagesと行って、Japanese [ja]をEnglish/United States [en-us]の上に持ってきています。(Firefox自体は英語版なのでメニューの表示は英語です)
ぼくはFirefoxでやっていますが、Chromeなど他ブラウザでも優先言語を変える設定なりExntensionがあるはずです。ポイントとしては、普段使うメインのブラウザは英語環境にしてしまう、ということです。
では、残り2つはどうでしょうか。
- キーの配置が違う、returnキーが小さくなるので押しにくい、controlキーが押しにくい
- 「英数キー」「かなキー」がなくなるので日本語入力の切り替えがしにくい
キーの配置の違いは、ぶっちゃけ言ってしまうと、慣れです。世界中のほとんどの開発者はJISキーボードを使ってないのだから、それが本質的・根源的な問題であるということはありえません。それに、実際的なメリットもあります:英語キーボードのほうが、スペースバーが大きくて押しやすい。JISキーボードは、FとJに左右の人差し指を置いたホームポジションで自然に使うには、ぎゅうぎゅうしすぎており、また、注意深く見るとわかりますが、左右のバランスが悪く、トラックパッドさえもやや左に寄せないと使いにくい配列になります。
Controlキーが押しにくいという問題は、プログラマーにとっては致命的なので、当然ながら解決方法があります。それもOS標準で。System Preference -> Keyboard -> Modifier Keys...と行くと、Caps LockをControlに設定することができます。この設定をやると、きちんとCaps Lockのランプがつかなくなるので、普通にControlキーとして使えるようになります。英語圏のプログラマーはほぼ全員が設定してるような気がします。
詳しくは、このあたりをどうぞ。 http://d.hatena.ne.jp/inouetakuya/20110726/1311640787
そして、「英数キー」「かなキー」これらは、なくてもcommand+spaceなどで入力言語を切り換えることができます。が、言語切り替えをステートレスにしてしまい、画面の右上をいちいち確認(あるいは実際に試し打ち)しなくても日本語or英語を打ち始められる、という意味では、これらのキーには一定の意義があります。
これを実現するには、KeyRemap4MacBook ( http://pqrs.org/macosx/keyremap4macbook/index.html )を使います。これで、「左のcommandキーを空打ちしたら、英数キーが押されたとみなす」「右のcommandキーを空打ちしたら、かなキーが押されたとみなす」というマッピングをすることができます。名前はfor MacBookとなっていますが、iMacでも普通に使えます。細かい気をつけるべき点としては、KeyRemap4MacBookを導入したらキーリピートの速度などをここで設定する必要があるということです。個人的には、[Key Repeat] Waitが83msというデフォルトは非常に遅いので、30msに変更してつかっています。
以上で、開発環境を完全に英語にしてしまうことに対するデメリットは、もうほとんどない、ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
さぁ、これを読んだら、今すぐMacを英語環境に切り替えましょう。